八尾トーヨー住器株式会社
2025/04/28
会社概要・業務内容
社名:八尾トーヨー住器株式会社
ホームページURL:https://yaotfc.com/
所在地:大阪府八尾市恩智南町2丁目6番地
従業員規模:150人
業種:卸売業、小売業
事業内容:住宅用建材・住宅設備機器・エクステリア建材・外装建材・太陽光発電システム・ビル用建材・木造軸組構造体などの販売
「長時間労働が当たり前」の環境に感じた危機感
当社は、高度経済成長期の住宅需要の増大と、真面目で一生懸命な社風により、順調に成長を遂げてきた会社です。その反面、時代が移り変わっても「時間で稼ぐ」という意識が根強く、長時間労働が慢性化していました。社員やその家族の不満が高まり、離職者が相次ぎ、少子化の影響もあって新たな人材確保にも苦戦していました。人が減れば残った社員の負担がさらに増し、業務効率も低下します。同業他社との差別化ができず、不毛な価格競争に陥り、売上も伸び悩むようになりました。
「このままでは会社がおかしくなってしまう」という危機感が募り、労働時間の削減を目指して社内のデジタル化を進め、テレワーク可能な環境の構築を決意しました。まだ「働き方改革」という言葉が使われていなかった2014年に「働き方の変革」を宣言し、取り組みを開始しました。
代表の金子社長
サテライトオフィスを活用したテレワークを導入
当時はパソコンを触ったことのない社員が大半だったので、まずは管理職と営業職の社員にタブレット端末を支給し、メールのやり取りなどを通じて「デジタルに慣れる」ことから始めました。
2015年には、5つの事業所すべてでフリーアドレスを導入し、同時にサテライトオフィス化も進めました。例えば、大阪のオフィスの社員が京都の現場に出向いた後、京都のオフィスでテレワークをすれば、帰社せずに業務を完了できます。また、当社では車通勤が一般的なので、社用車での通勤を許可し、オフィスに戻る必要性を減らしました。その後、営業職以外の社員にもデジタル機器が行き渡ったのを機に専用の業務ソフトを導入し、紙の伝票処理は廃止しました。
2019年4月には、育児休業から復帰した社員に声をかけ、在宅勤務に挑戦してもらいました。これは、育児や介護との両立がしやすい体制づくりに向けた試みでもありました。おかげで新型コロナウイルス流行時に他の社員もスムーズに在宅勤務へ移行できましたし、その後も数名の社員が必要に応じて在宅勤務を選択しています。
デジタル機器を使う社員
労働時間削減、離職率低下など様々な効果をもたらす
テレワーク導入当初は、変化に対して抵抗感をもつ社員も少なくありませんでした。「紙の伝票で問題なく仕事がまわっているのに、なぜ廃止するのか」という意見もありましたが、「“今”のためではなく“先”のために必要なのだ」と訴え、改革を進めました。次第に営業職の社員から「直帰できるようになって家族との時間が増えた」などの声が上がるようになり、社員の意識も少しずつ変わっていったと思います。
2019年の時間外労働は、2017年比で63%削減を達成しました。サテライトオフィスでのテレワーク推進により移動時間が減ったことが最大の要因だと考えられます。また、現在の体制になってから、育児や介護などのライフイベントを理由とした離職者は0人を維持しています。新卒採用も順調に進むようになり、近年は毎年4~8名をコンスタントに採用できています。
加えて、フリーアドレスとサテライトオフィスの導入により、社員同士のコミュニケーションも活性化しました。以前は自分のオフィスの社員としか交流がありませんでしたが、今では会社全体での会話が増え、新しい発想が生まれやすくなっています。
業務のデジタル化を推進
さらなる働きやすさのためにテレワーク環境の進化を
2024年度から、新たにフレックスタイム制度を導入しました。当社のメイン顧客である建設会社の方々は、昼間は現場に出ており、打ち合わせを夕方から始めざるを得ないことがよくあります。フレックス導入後は、例えば10時から在宅でテレワークを行い、午後に打ち合わせ先へ直行し、終了後は直帰するといった柔軟な働き方が可能になりました。テレワークとフレックスの組み合わせで、さらなる業務効率化・労働時間削減を実現できたと思います。
今後は、現在のテレワーク環境のさらなる進化を目指しています。すでに一部でRPAの導入を進めており、AIの活用も検討中です。CTI(※)も導入済みですが、まだ十分に活用しきれていないため、今後の課題となっています。こうしたデジタルツールを有効活用することで、より働きやすい環境づくりを推進し、最終的には「人にしかできない仕事」に特化した企業へと成長することが目標です。これからの未来、顧客に選ばれ続けるのはそのような企業だと考えています。
※CTI(Computer Telephony Integration)=パソコンと電話を連携させるシステム。パソコン上で電話を操作したり、入電時に相手先の情報を表示したりできる。
テレワークも可能な自社コミュニティスペース
テレワークは企業を存続させるための手段
現場に出向く仕事が多い業種では、「家で仕事をするなんて不可能だ」と考える方も多いでしょう。ただ、テレワークとは本来「離れた場所で仕事をする」ことを指します。「テレワーク=在宅勤務」というイメージにとらわれず、当社のようにサテライトオフィスでテレワークができる仕組みを構築するのもひとつの選択肢だと思います。
日本の人口減少が進み、採用活動は今後ますます厳しくなると予想されます。企業の根幹は「人」であり、「人」が働きやすい環境を整えなければ、企業の存続すら危うい時代になっています。テレワークの導入は目的ではなく、企業を存続させるための手段です。コロナ禍が過ぎてテレワークを廃止した会社の話も耳にしますが、今後も残り続ける会社を目指すのであれば、テレワークが可能な体制は継続していくべきだと思っています。
我々を取り巻く状況は日々、急速に移り変わっています。これからテレワーク導入を検討している会社は「もう少ししてから」ではなく、「今」始めることが大事なのではないでしょうか。
住まい方に関する出前授業など様々な取組を行う