株式会社NTTアグリテクノロジー
2025/03/18
「農業×ICT」で持続可能な農業を実現
近年、日本では少子高齢化に伴う急速な農業従事者の減少が進んでいます。また、世界では感染症や地政学リスク、気候変動の深刻化などにより、食の安定提供に対するリスクが課題となっています。当社はこれらの社会課題をICTで解決するべく、令和元年にNTTグループ唯一の農業専業会社として創業しました。施設園芸等による農作物の生産・販売を行う自社ファームを運営する一方、NTTグループが持つ技術とノウハウを駆使し、「高い生産性」と「持続可能な農業」を実現する様々なソリューションを提供しています。
社会課題の解決に向けてあらゆる方法を検討する中で、一つの手段として行き着いたのが農業生産者を遠隔で支援する「遠隔営農支援」です。
自社圃場を保有し、自らも農業生産法人として生産活動を行う
「遠隔営農支援」で農業普及指導員がテレワークにより支援・指導
遠隔営農支援においてキーパーソンとなるのが「農業普及指導員」です。農業普及指導員とは、農業従事者に直接接し、農業技術や経営を向上するための支援を専門とする職員です。近年、農業従事者の減少とともに、農業普及指導員の数も減少しています。さらに、農業普及指導員は車で各農家を訪問するため、交通渋滞に巻き込まれることも多く、移動時間を考えると労働効率が良いとはいえない状況です。
まずは「移動時間」を減らして、農業普及指導員がより多くの指導・支援ができないかと考える中で、解決策として生まれたのが遠隔営農支援です。具体的には、JA全農や農研機構、東京都とそれぞれ連携し、コックピットと呼ばれる栽培支援センタを設置し、ここに農業普及指導員を配置します。カメラ映像やセンサーデータによって生産現場の環境をリアルタイムに把握しながら、的確な支援、指導を双方向で行います。つまり、農業普及指導員のテレワークです。一般社団法人日本テレワーク協会が主催する第24回テレワーク推進賞において、当社が最高上位である会長賞を受賞できたのも、「遠隔営農支援は究極のテレワークスタイルである」と評価されたためだと考えています。
遠隔栽培支援センタ(コックピット)の様子
新規就農者の指導もテレワークで可能に
ただ、当初はテレワークでの指導に対して懐疑的な見方をする農業普及指導員も多く、「現場で実際に見なくては、作物や病虫害などが判断できない。」と言われたこともありました。この印象を変えられたのは、ひとえにソリューション技術の品質が高かったからだと自負しております。たとえば、当社が遠隔営農支援で使用しているネットワークカメラは、葉脈まで鮮明に写し出せるのが特徴ですが、皆さん画像を見た瞬間に「これならできる」と感じられたようです。自社ファームで実際に使用しながら技術を磨き上げた時間が、多くの人にご納得いただけるスタイルに繋がったのだと思います。
また、ハードウェアが功を奏した点として、スマートグラスによる新規就農者の指導があります。農業未経験者にスマートグラスを装着していただき、農業普及指導員が遠隔で指導を続けたところ、見事に品質の高いトマトを安定的に収穫することができました。スマートグラスを通し、目線を共有してコミュニケーションを取りながら栽培従事ができたことで、テレワークで指導ができることに加え、就農者が安心して栽培できる成果に結びつきました。
スマートグラスで遠隔指導を受ける様子
「農業を憧れの産業にする」未来を最先端技術で創る
現在、JA全農が運営・支援するいくつかの圃場に遠隔営農支援システムの導入が始まっています。施設園芸でのトマト、なす、きゅうり、露地栽培での玉ねぎなど、遠隔営農支援で収穫した農作物のバリエーションも増えつつあります。今後は、地域JAや自治体、農業法人などに多く実装いただけるよう働きかけ、社会課題に貢献していきたいと考えています。
同時に、当社が提供するソリューションを進化させていくことも重要なミッションです。指導・支援における生成AIの活用、生産現場におけるロボティクスによるオペレーション技術の向上にも取り組んでおり、将来的には人間の手を介さずとも、農作物を安定して高品質なものを生産できる世界が実現できると考えています。農業が強い産業、そして憧れの産業となる未来に向けて、これからも最先端技術で日本の農業をアップデートしていきます。
ロボティクスによる技術向上にも取り組む
テレワークはアジャイル型で進めるのが正解
テレワークと一言で言っても、各企業によって背景や課題が異なるため、企業や事業の数だけスタイルがあると思っています。そのため、テレワークの浸透は、やりながらフィットさせていくという前提に立ち、実行と改善を短いスパンで繰り返していく、いわゆる「アジャイル型」で進めるのが正解でしょう。
経営者はテレワークを画一的なものと捉え、システムや制度といった方法論から入りがちですが、それよりも先に従来のスタイルに疑問を持ち、テレ(遠隔)で実現するワーク(仕事・事業)による世界を想像し、「まずはやってみること」が重要です。営業部や育休中の社員など、さまざまな立場の人たちに実際にテレワークをしてもらいながら、意見を出し合い、理想のカタチへとブラッシュアップしていくことで、それぞれの企業や事業にフィットしたテレワークスタイルが生まれるはずです。テレワークは完成形を「導入」するのではなく、「想像」してみんなでスタイルを「作り上げる」。それを顧客への付加価値や従業員への満足に繋げていく。その感覚を持つことが、テレワークを成功に導くカギと思っています。