株式会社船場
2025/03/28
会社概要・業務内容
社名:株式会社船場
ホームページURL:https://www.semba1008.co.jp/
所在地:東京都港区芝浦1-2-3 シーバンスS館 9F
従業員規模:379人
業種:サービス業(内装ディスプレイ業)
事業内容:空間づくりにおける調査・分析、コンセプトメイキング、企画・コンサルティング、デザイン・設計、制作・施工、デジタル技術を活かした空間演出、メンテナンスならびに施設運営
コロナ禍以前からリモートで働く環境づくりに着手
当社がリモートワークの環境整備を整え始めたのは2013年ごろまで遡ります。空間づくりを手がける当社は、社員が現場に出向いて行う仕事も多く、生産効率を少しでも高めるため、社員にノートパソコンやスマートフォンなどの貸与を行い、現場からネットワークにアクセスできる環境づくりに取り組んできました。その後も、出張コスト(旅費と時間)の削減のためにリモートでの打ち合わせ環境の整備を行うなど、時間をかけて少しずつ環境整備を進めていましたが、コロナ禍で当社のDX化は一気に加速。“どこでも働ける環境”を地道に整えてきたことで、緊急事態宣言が発令された際もスムーズに在宅勤務に移行することができました。
現場でモバイル端末を使って作業を行う様子
コミュニケーションの多様化と業務効率化を徹底
「建設業の2024年問題」と言われるように、業種が近しい当社も人材不足、長時間労働の是正への対応といった大きな課題を抱えています。その対策として、DX化は大きな役割を果たすと考えており、当社では「働き方と考え方をTransformする」という基本戦略を掲げてDXを推進しています。
「働き方」については、対面やメール、電話だけでなく、Web会議システム、チャットなどを駆使し、 “360度のコミュニケーション”として社員間の日頃のやり取りを多様化。同時に、社内決裁の電子化、電子契約を段階的に導入し、業務フローを改革することで、移動や雑務に追われる時間を削減し、これまで以上に仕事に集中できる環境づくりに注力しています。
「考え方」については、業務の変革が1つ挙げられます。これまでは、図面や設計・施工に関する情報を紙で印刷してクライアント先や現場に伺うことが多かったのに対し、これらを電子化しクラウドで管理することで、タブレットやパソコン上で閲覧できるようになりました。このため、例えばオンラインで打ち合わせができるようになり、移動や出力の手間がなくなり仕事が効率化できました。また、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)※の導入により、プレゼンやクライアントとのやりとりも円滑に進むようになりました。DXとテレワークがうまく紐づき、仕事の効率化が図れていると感じています。
※BIM(Building Information Modeling)は、建築物の3Dデジタルモデルにコストや管理情報を追加し、設計・施工・維持管理の全工程で活用するソリューションです。BIM対応ソフトを使うことで業務効率が向上し、建築デザインの革新を促すワークフローとして主流になりつつあります。
BIMで作成したイメージ
社員の多様な働き方を後押し。長時間労働是正にも大きな効果
これまで産休や育休を経た人は、時短勤務をすることが圧倒的に多かったのですが、「テレワークができるなら」とフルタイムで働く社員も増えました。これは社員のキャリアにも良い影響を与えると考えており、テレワーク導入の大きな成果だと感じています。ほかにも夜間の業務を終えた翌日、出張の翌日など、体力的にツラい日に在宅勤務が選べることも社員に喜ばれています。また、チームで協働する日は出社、一人で集中して作業を行う日は在宅勤務とその日の業務に合わせて選べることが業務効率化につながっています。採用活動でもテレワーク勤務が可能ということに魅力を感じてくれる方が多く、多様な働き方を目指す当社の社風をPRする良い材料になっています。
また、喫緊の課題であった長時間労働の是正についてですが、令和5年度は1ヶ月の残業時間が18時間を切っており大きく改善しました。現在は16時間を目指しています。残業時間が削減されたことに伴い、1人あたりの売上高が上昇していることも大きな成果であり、社員の働きがいにつながっていると思います。
社内で業務を行う社員の様子
より安全で、社員に寄り添ったシステムの導入で、
快適なテレワークをサポートしたい
現在、テレワークに関する施策はひと段落ついたところですが、DX全体で見ると、まだまだデジタル化の余地はあると考えています。その一例として、これまではITシステムを整えることを優先し、社員からの意見収集は簡易的なインタビューで済ませていましたが、今後はこれまで以上に社員の意見を広く収集して、より現場に寄り添ったシステムの導入や改善を行い、効率化を図っていきたいと考えています。
また、経済産業省のDXレポート「2025年の崖」の中で、IT人材が減っていくことが予想されています。古いITシステムは保守運用に手間と費用がかかるため、これらを新しいシステムに入れ替え、効率的で安全なセキュリティに守られた環境を整備することが重要になってきます。それは結果的に、快適なテレワーク環境の整備にもつながってくると考えています。
段階的なシステム導入と、部門間連携がテレワークを成功に導く
テレワークの仕組みを一度に構築するのは、かなりの労力とコストがかかり大変です。段階的な環境の整備がおすすめです。当社もそうでしたが、IT助成金制度を活用して少しずつ取り組むことで、費用負担の低減やメリット・改善点などが検討しやすくなり、継続的に効果を出していくことができました。
また、テレワークを進める上で、システムだけが揃っていても満足できる効果は得られません。肝心なのは社員に快適に活用してもらうことです。当社の場合は、人事部門がテレワークのルールを定めて、IT部門がシステムを構築、再び人事部門が社員に周知し、社内風土をつくっていくという、部門間の連携を徹底していました。
働きやすい環境づくりは社員の働きがいにもつながりますので、取り組まない手はありません。様々な事例を参考に、自社の業務にあったテレワーク環境づくりに取り組んでほしいと思います。
リニューアルしたオフィスの様子
(Photo by Katsuhiro Aoki)